全日本選手権を見て考える日本女子フィギュアスケートの現在地 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今季、4回転を跳ぶロシア勢がシニアへ上がってくるということで、宮原も坂本もトリプルアクセルの練習に取り組んでいた。ふたりにとって精神的にも肉体的にも負担は大きかったはずで、その影響もあるのだろう。

 そんななか、SP4位発進からフリーで巻き返して2位になった樋口新葉は、ケガで出遅れたこともあって早くからこの全日本に照準を絞り、食事制限をして体重のコントロールに努めてきた成果が出た。

 フリーでは「練習では跳べるようになっていた」と言うトリプルアクセルには挑戦せず、後半の3回転フリップで着氷を乱して連続ジャンプにできないミスもあったが、最後の3回転ルッツに2回転トーループ+2回転ループを付けてリカバリーし、合計206.61点で2位。

 樋口にとって今回の2位は、今後の浮上へのきっかけになるだろう。ただし、ミスが無くても210点台に乗るくらいで、まだまだ完全復活とは言えず少し物足りなさも感じる。とくにフリーは前半かなり慎重で、持ち味である躍動感にやや欠ける滑りになっていた。それでもジャンプがすべて終わったあとのステップでは、彼女らしいスピードあふれる滑り。そんな攻めの滑りができるようになれば本格復活と言える。また、トリプルアクセルを組み込めるまでの自信を持てるようになれば、その滑りもガラッと変わってくるはずだ。

 今回の全日本の結果、世界で戦える力を見せたのは紀平のみと言える。復調してきた樋口は勢いのある滑りを取り戻せばまだ点数を伸ばしていく可能性はあるが、宮原と坂本はどれだけジャンプを取り戻していけるかがポイントだろう。来季へ向けてトリプルアクセルも必要になってくるが、まずは現在の構成で自信を取り戻せる演技をするのが、復調への第一歩となるはずだ。

 一方、12月25日からのロシア選手権は、予想どおりすさまじい結果になった。ロシア国内の大会のジャッジで少し判定は甘めとはいえ、SP、フリーの合計で261.87点を獲得したアンナ・シェルバコワと、美しい演技で259.83点を出したアリョーナ・コストルナヤの結果を見れば、とても勝てそうにないとさえ思えてしまう。

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