宇野昌磨が取り戻した楽しむ気持ち。ランビエルと「一緒に戦っていきたい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今シーズン、コーチ不在で不調に悩んでいた時、宇野は島田のいるステファン・ランビエルコーチのスイス合宿に参加した。来シーズンからは、島田と"同門"になるはずだ。

「(ランビエルの指導を受けた)グランプリシリーズのロシア大会から、ようやくスタートを切れました。それまでは地に足がつかず、スタートできていなかったと思います。昨シーズンは練習でできても、試合でできない、だったですが。今シーズンは、練習でできず、試合でもできていなかった」

 再びスケートを楽しめるようになったことで、宇野は魔法をかけてもらったように力を取り戻した。

 この日も、本番前から落ち着いていた。冒頭の4回転フリップが練習では2度うまくいかなかったが、すぐにリンクサイドに戻る。そしてテープで靴をきつく巻き直した。

「かたく巻けば跳べるかな、と思ったので。6分で時間はなかったですが、無駄にしてもやるべきだって思いました。その後の練習では跳べて」

 そう語る宇野は、腹を括っていた。

「あとは、(試合は)うまくいく、いかない、は運もある、と思っていました。練習で100%、成功しているわけではないのに、試合で100%跳べるはずがないって。なのに試合で失敗して落ち込むなんて、自分に期待しすぎているというか、高望みしているだけなんだと気づきました。だから、たとえ失敗しても、そこを引きずらないように、と思っていました」

 演技直前、宇野はリンクサイドのランビエルコーチと言葉を交わしている。束の間、静寂に包まれた。音がないという音があった。「Great Spirit」がけたたましく会場に流れると、ほとんど同時にスタンドから拍手が湧き起こる。彼は、4回転フリップを鮮やかに決めた。その姿に、拍手が強く鳴り、むせぶような声が漏れる。続けざま、4回転トーループプラス2回転トーループも成功した。

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