羽生結弦は冷静に練習する。綿密に考え、実践していることとは? (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生は、オータムクラシックの公式練習では、4回転ループを何度も跳んでいるうちに徐々にジャンプの調子が悪くなっていた。それもあって、次のスケートカナダの公式練習では、一本一本に集中して本数を少なめにしていたが、今回も同様に冷静に練習に取り組んでいた。

 その後の記者会見で、羽生は今大会の抱負について、「最後まで全力で、健康にショート、フリーとも滑れたらいいなと思います」と答えている。過去2シーズン、羽生はGPシリーズ2戦目でケガをして、ファイナルや全日本選手権を欠場している。カナダで口にしたのは、過去2シーズンの結果を反省し、今季は「ファイナルに進出すること、さらに全日本選手権でいい演技をすることが最も必要」と宣言していた。

 そのためにも、新たな高難度ジャンプの習得を急ぐのではなく、今自分が納得できるジャンプやつなぎの構成で、GOE(出来ばえ点)を獲得できるプログラムの完成をしなければいけないと考えた。そして、スケートカナダでまさにそれを実践したのだ。今回のNHK杯はその延長線上にあると言える。

 羽生は、いま意識して実践していることをこう話した。

「とにかく自分が、どれくらいジャンプの本数が必要なのかとか、氷上でできることは何で、陸上でできることは何か......。陸上では何ができて、氷上では何ができるかということをすごく綿密に考えています。もちろん計画どおりに行くわけではないですが、それでもある程度は自分の中で『この感触の時はこのくらいはできるな』ということを、ケガをした経験を通してあらためて感じています。その経験をしっかり生かして、自分にリミッターをかけるというか......、ネガティブではなくポジティブなリミッターを氷上でかけて、陸上でやれることをやるということを、ちょっとずつ増やしています」

 スケートカナダから羽生が言葉や態度で示している「今できうる最高のものを、自分が納得できるスタイルでやろう」という思い。それをこの大会でも実践しようとしている。

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