2019.10.23

度肝を抜く4回転を見逃すな。
トゥルソワが世界を「炎で焼き尽くす」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 日本、北米、欧州、3地域対抗の団体戦、「ジャパンオープン2019」が終わったあとの会見だった。

ジャパンオープンで4本の4回転ジャンプを跳んだトゥルソワ「トリプルアクセルも、そろそろ導入するつもりです。いつから? えっと、跳べるようになったら、かな?」

 アレクサンドラ・トゥルソワ(15歳)はそう言って、恥じらう笑みを洩らした。隣に座る世界女王、アリーナ・ザギトワ(17歳)に「これでいいのかな? お姉ちゃん」と伺うような様子があった。人前で話すことに慣れていない、あどけない少女だ。

 しかし氷の上でのトゥルソワは、まるで魔力でも得たかのようだった。

 4本の4回転ジャンプ、すべて着氷した。難易度の高い4回転ルッツは、14.46点。4回転トーループからの連続ジャンプでは、オイラーを入れたあと、3回転サルコウを跳んだ。

 技術点だけで、97.51点。2位のザギトワがそつなく跳んでも80.08点だけに、常軌を逸している。男子世界王者のネイサン・チェンと変わらないプログラムだった。当然、女子6選手中1位の得点。世界トップのザギトワ、紀平梨花、宮原知子らを引き離した。

 ただ、アクセルジャンプだけはまだダブルだ。

 これでトリプルアクセルを入れられるようになったら、トゥルソワは無敵どころか――。フィギュアスケートの形そのものまで変えてしまうかもしれない。

 2018年の世界ジュニア選手権、トゥルソワは鮮烈な連覇を飾っている。2本の4回転ジャンプを成功。4回転サルコウは安藤美姫以来、女子で2人目になった。そして、2本の4回転を成功させた史上初の女子選手になっている。その後の大会で4回転ルッツも決め、女子ジュニアにして男子シニアのトップレベルの構成を組めるようになった。

 そして今シーズン、トゥルソワは満を持してシニアデビューしている。9月のISUチャレンジシリーズ「ネペラメモリアル」では、238.69点で世界記録を更新。いきなり度肝を抜いた。