羽生結弦の好敵手。ネイサン・チェンはさらに成長する可能性を秘める (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 さらに今回の世界選手権で目を引いたのは、これまで苦手にしていたトリプルアクセルを、点の取れるジャンプに仕上げてきていることだった。ただ、まだ苦手意識があるのか、今季、フリーで多くのトップ選手がトリプルアクセルを2本入れているなか、チェンは1本にとどめている。ルール改正でジャンプの本数が8本から7本に減った状況では、得意とする4回転で勝負した方がいいという考えがあるのだろう。

 そんなチェンには、まだまだ伸びしろがある。それぞれのジャンプに磨きをかけて、GOE加点を獲得するのはもちろん、現在フリーで2本跳んでいる4回転トーループを、ルッツかフリップに変えて点数を伸ばすことも可能だろう。

 また、「今回はサルコウをもう一度入れようとも思っていましたが、タイミング的によくないと思ったのでやめました」と本人が言うように、フリーの4回転ジャンプを4種類5本の構成にする可能性もある。

 それに加えて、リズムに乗った勢いのある滑りで表現力やプログラム自体の完成度を高めており、演技構成点もしっかり伸びている。今後、その強さは揺るぎないものになっていきそうだ。

 ただ、彼はまだ大舞台での大接戦を経験していない。今回の世界選手権はSPで大量リードを築いてフリーに臨めたが、今後、羽生や宇野昌磨が得点を伸ばし、SPから僅差の展開で、ほんの些細なミスも許されない戦いになったときでも、ノーミスのパーフェクトな演技ができるかどうか。

 チェンにはこれからも、羽生や宇野のライバルとしてハイレベルな戦いを期待したい。それこそが、フィギュアスケートというスポーツがさらに発展していく原動力になるはずだ。

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