全日本の優勝候補筆頭。紀平梨花のトリプルアクセルは男子並み (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 つまり、今の紀平にそれだけの得点能力があることで、女王ザギトワは紀平に勝つためにはこれまで以上の完璧さを求めなくてはいけないというプレッシャーにさらされることになったのだ。

 そんな状況になったからには、頂点を目指す選手たちも「トリプルアクセルは必要不可欠」という意識に変わってくる可能性が高い。さらに、ジュニアではロシアのアレクサンドラ・トゥルソワが昨季の世界ジュニアのフリーで4回転サルコウと4回転トーループを決めており、今季のジュニアGPアンバー杯では4回転ルッツと4回転トーループ2本の構成にも挑戦している。

 トゥルソワは、ジュニアGPファイナルでは4回転ルッツは成功しなかったが、4回転ルッツ+3回転トーループ、4回転ルッツ、4回転トーループの構成に挑んでいる。また同じくジュニアGPファイナルに出場したアンナ・シェルバコワ(ロシア)も国内大会では4回転ルッツ+3回転トーループを決め、4回転ルッツ2本の構成にも挑戦している。

 紀平がファイナルで「今回の演技は80%くらいで、あと20%は4回転。まだどういう時代が来るかわからないので、4回転も練習しておきたいし、どんどん先に行っておかないと大きな目標である北京五輪優勝も達成できないと思う」と4回転トーループへの挑戦を口にしたのも、ロシア勢のことを意識しているからだろう。

 ただ、ジュニアの場合はシニアになって体が変化してきた時にどうなるかという懸念があるのも確かで、このまま4回転時代が始まるかどうかはまだ不透明だ。それでも、紀平がトリプルアクセルを武器にしてシニアでタイトルを獲得したことは、女子のジャンプ高難度化時代の幕を開くものであるのは事実だ。

 そんな紀平が今、世界に脅威を与えるためにも見せなくてはいけないのは、自らのトリプルアクセルの安定度が本物であるということだろう。全日本選手権でも、紀平のトリプルアクセルに注目だ。

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