GP連勝。負傷した羽生結弦がロシア大会フリーに出場した理由 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「この大会はシニア1年目のシーズンに初出場して、翌年に初優勝をした大会ですし、今日(エフゲニー・)プルシェンコさんは来ていなかったですけど、タラソワさん、(アレクセイ・)ヤグディンさんのほか、僕がスケートに熱中するきっかけとなった方々がいる大会。今のフリープログラムの完成した演技をしたかったですが、それができなくて残念です。でも、この状態ではある程度は頑張ることができたかなと思います」

ロシア大会で優勝し、GP連勝を飾った羽生結弦ロシア大会で優勝し、GP連勝を飾った羽生結弦 演技後にこう話した羽生だが、フリー出場の代償は大きかった。

「靭帯の損傷は間違いないですし、ドクターには3週間の安静が必要だと言われました。ファイナルだけではなく、調整期間を考えると全日本も厳しいので何を選択しようかということになりました。何をやって何を削るかということまで考えたうえで、今日しかないなと思いました。自分にとって大切な場所であるロシアということもありましたし、ここまでトレーニングをしてきたことが何か自分にとっては重いものだったので『ここであきらめたくない』ということと、何とかしてトレーニングの成果を少しでも出したいなと」

 スケートの場合、「ケガが治ったらそれで終わりというわけではない」と羽生は言う。そこからしっかりトレーニングができるか、ちゃんと自分がやりたいスケートをできるかどうかが問題になる。だからこそ、このロステレコム杯とファイナル、全日本の3試合を想定したうえで、何を選ぶべきかと考えた。その結論がロステレコム杯フリーの出場だった。

 昨年のNHK杯でケガをして以降、「右足首がほんのちょっと衝撃を受けても大きなケガにつながってしまうことがすごく悔しい。そういう転倒をした技術不足の自分に対しての悔しさもある」と羽生は言い、「だから、そんな脆さも含めて強い演技を...。またしっかり積み重ねて強い演技をしなくてはいけないなという風に思います」とも話す。

 優勝から一夜明けて、羽生は「ファイナルへ向けて全力で治療をします」とコメントを出したが、次に出場する試合がどこになるかは、回復のスピード次第だろう。今季最大の目標は4回転アクセルではなく、今後もSPの『秋によせて』とフリーの『Origin』を自分の感情をしっかり込めた完璧なプログラムに近づけることになるはずだ。

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