GP連勝。負傷した羽生結弦がロシア大会フリーに出場した理由 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 4回転トーループからの連続ジャンプが少しぐらついたのは「ちょっと悔しい」と言うが、フィンランド大会に比べればミスと言えるようなミスはないと振り返り、「ノーミスと胸を張って言えるくらい」と笑顔を見せた。得点は、新ルール世界最高の110.53点。

「目標は106点でした。フィンランドと同等の点数を取れれば自分的には満足かなと今回は思っていました。だから頑張ったかなと思います。今の構成ではこれがマックスだと思う」と、本人も納得の演技だった。

 それを翌日のフリーにもつなげようとしていたが、アクシデントは朝8時20分からの公式練習で起きた。

 曲かけが始まると、試合前日の公式練習から入念にチェックをしながら跳んでいた最初の4回転ループで転倒したのだ。その瞬間は「カチン!」という音も聞こえた。しばらく倒れ込んでいたが立ち上がると何か考える様子でリンクを行き来し、曲の途中で観客に挨拶をしてリンクから上がった。

 午後1時半から始まった男子フリー、羽生はジャンプ構成を変えて試合に臨んだ。

「朝の練習の曲かけで転倒した際に『もういっちゃったな(ケガをしたな)』とすぐわかったので、それから確認作業を始めました。リンクを少し移動しながら、ここで何をやろうか、あそこで何をやろうかと考えて。あの時に新しい組み立てを考えていました。ただやったことがないものが多かったから、やっぱりちょっと難しかったなと思います」

 急遽変更した構成は、4回転をループとサルコウから、サルコウとトーループにするもの。そのふたつのジャンプは3.60点と4.34点の加点をもらう出来にし、ステップシークエンスと3回転ループまではきっちりこなした。そのあとは単発の4回転トーループを3回転フリップに変え、次に4回転トーループからの3連続ジャンプを狙ったが、トーループで着氷を乱してEu(オイラー)がダウングレードに。それでも3回転サルコウはしっかり付けた。

 だが「構成を落としていたので体力はもったけど、最後はフワフワしてしまいました」と本人が言うように、次のトリプルアクセルでは転倒して、最後のトリプルアクセルはシングルアクセルになってしまった。スピンはすべてレベル4にしたものの、終盤はミスが続いて連続ジャンプは1本のみ。それでもフリートップの167.89点を獲得し、満身創痍ながら合計を278.42点にしてGP連勝を決めた。

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