追悼デニス・テン。冷静で美しい滑りを見せてくれたカザフスタンの英雄 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi photo by AFLO

 そして、翌シーズンは四大陸選手権でSP、フリーとも自己最高得点を出して圧勝。世界選手権でもSPで最初の4回転トーループで転倒して3位となりながらも、フリーでは1位の181.83点を獲得して合計3位を堅持。世界トップクラスの実力を証明した。

 だが、その後はケガに苦しんだ。4回転時代に突入するなかで、4回転トーループ2本の構成に4回転サルコウも入れるようになり、確率を上げている段階で苦しむシーズンもあったが、ミスがない時はしっかり加点をもらえるきれいなジャンプをしていた。

 また、演技構成点は、自己最高の191.85点を獲得した15年四大陸選手権で、トランジション以外は9点台に乗せており、表現力も高く評価されていた。ジャンプがさらに安定してくれば、新ルールとなる今シーズン、テンが再び上位に食い込んでくる可能性もあったといえる。

 そんな新シーズン開幕を前にしての突然の訃報。冷静さが際立つきれいな滑りと、独特な表現の演技を見ることができなくなったのは、フィギュアスケート界にとって大きな損失だ。

 7月21日、カザフスタンのアルマトイで行なわれた彼の追悼式典には、およそ5000人が集まったという――。

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