本番まで残り約1カ月...羽生結弦は平昌五輪で4回転を跳ぶのか? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 チェンの強みは、本人が「その時の調子によって4回転の構成を変える」と話していたように、その柔軟さにある。フリーのジャンプ構成を、ファイナルでは4回転ルッツと4回転トーループを2本にしていたが、全米選手権では不調だったルッツをSP、フリーとも使わず、フリーでは前半に4回転フリップ2本で、後半に4回転トーループ2本とサルコウ1本という4回転ジャンプ合計5本の構成にしている。チェンは、「練習ではいろいろな構成をやっている」とも話していたが、その柔軟な対応力は五輪でも大きな武器になってくるだろう。昨季の世界選手権は6位と振るわなかったが、着実に安定性を身につけているだけに要注意だ。

 ボーヤン・ジンは、昨季前半戦は調子が悪かったものの、世界選手権では3位になり、大舞台にうまく合わせてくる能力は持っている。さらに、フェルナンデスも今季はGP初戦の中国杯で体調不良のため6位に沈んでファイナル進出を逃してはいるが、フランス杯のSPではノーミスで17年世界選手権に出した自己最高得点に1.19点差まで迫る107.86点を記録。宇野の追撃を振り切って優勝している。また、12月のスペイン選手権でもSPで107.73点を出しているだけに、4回転3本の構成にしているフリーをノーミスで滑れば、メダル争いに絡んでくる力は持っている。

 そのほかでは、GPファイナル3位のミハエル・コリャダ(ロシア)も、要注目選手になってきている。自己最高得点はまだ282.00点で、ファイナルでも4回転ルッツなどで転倒していたが、SPは転倒があっても99.22点の高得点を獲得した。さらに、その2週間後のロシア選手権では、4回転ルッツのステップアウトに加えてトリプルアクセルでも減点されるミスがありながら、SPで101.62点を獲得。フリーでも、4回転サルコウの転倒や、トリプルアクセルが1回転半になるなどいくつかミスはあったが、179.54点を獲得しており、こうしたミスをなくせば一気に得点を伸ばしてくる可能性はある。

 平昌五輪本番まで残り約1カ月。各選手がどのような調整をして本番に臨んでくるのか、そして羽生のコンディションはどこまで戻るのか、その戦いはすでに始まっている。

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