次のステップへ。羽生結弦が語る300点超えの優勝よりも重要なもの (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 名前をコールされる直前の滑りでも、いつもであればトリプルアクセルを跳ぶところを、この日は3回転ループを2回跳び、最後はサルコウの入りを確認するだけにとどめて、ループの感覚を優先していた。

 羽生には4回転ループへのこだわりがあった。スケートカナダのあと、彼はブライアン・オーサーコーチから「トータルパッケージを大事に」と言われ、話し合ったという。オーサーの目には、彼が4回転ループに集中し過ぎて、ほかの要素が犠牲になっているように見えたのだ。

 羽生はその意見に対し、「4回転ループも演技の一部だからまずそれをやりたい」という思いを率直に話した。彼自身、演技を完成させるということは、プログラムに入れたジャンプを、それがどんなに難度の高いものであってもきれいに跳ぶことを前提条件と考えているのだ。

「スケートカナダまではジャンプのためのスケーティングを重視してやっていましたが、そのステップをカナダで達成できたので、スケートとジャンプを一体化するトータルパッケージを作っていこうと(ブラインアン・オーサーコーチと)話しました。その話し合いもあって、4年目にしてさらに垣根がない関係になってきたと思いますし、その後の練習の質も内容もよくなってきたと思います」

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