2015.06.01

羽生結弦はなぜ、アイスショーで4回転ループに3回も挑戦したのか

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 そこで転倒してしまった羽生は、もう一度4回転ループに挑戦したが、今度は2回転になってしまって苦笑い。それでも、羽生は負けん気を見せて、他の選手がリンクから去ったあとに3回目の挑戦をしたが、それも転倒してしまった。最後に羽生は、客席に向かって両手を合わせて謝るしぐさをしながらリンクを去り、この日のアイスショーは幕を閉じた。

 羽生は4月の世界国別対抗戦の後、2014-2015シーズン、ついに完成させることができなかった「演技後半に4回転を入れるプログラム」に「来季も挑戦する」と明言していた。これまで羽生は、4回転トーループやサルコウだけではなく、ループやルッツなどの4回転も練習で挑戦している。その理由を「4回転サルコウが、(自分が競技会で)今できる一番難しいジャンプ。その確率を上げるためにも、もっと難しい(ループやルッツなどほかの)4回転に挑戦することで、精神的な限界値を上げられると思うから」と話していた。

 そして、エキシビションやアイスショーのフィナーレであっても、その考えは同じだ。今回のアイスショーでの4回転ループ挑戦は、羽生の新しいシーズンへ向けての意欲の高さを示すものといえる。

 それは、羽生自身、2015-2016シーズンの戦いがより厳しくなることを予想しているからだろう。まず、羽生が大きな目標として追いかけ続けていたパトリック・チャン(カナダ)が、1年間の休養から復帰する。彼はきっと、新たな武器を身につけて戻ってくるはずだ。

 また、新たなライバルとして、同じブライアン・オーサーコーチの指導を受けるチームメイトであり、新世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)も力を伸ばしてきている。さらに、3月の世界選手権のフリーでフェルナンデスと羽生を抑えて1位になったデニス・テン(カザフスタン/世界選手権3位)も、かつてより安定感を高めてきている。