GPファイナルで下剋上を誓う羽生結弦の前進力

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

11月特集 フィギュアスケート新時代 (10)
 信じられない光景だった――。11月29日のNHK杯男子フリーで、ショートプログラム(SP)5位からの逆転を狙って滑り出した羽生結弦だったが、最初の4回転サルコウが2回転になり、続く4回転トーループは3回転になったうえに転倒までしたのだ。

フリーで得点が伸びず、NHK杯を4位で終えた羽生結弦フリーで得点が伸びず、NHK杯を4位で終えた羽生結弦「最初の(4回転)サルコウは、試合になるとどうか......というのはありますけど、練習でけっこう決まっているので、昨年よりは良くなっています。サルコウを跳んだ直後は『今のはダブルだったな』と思って、次のトーループはパンクしないでしっかり跳ばなきゃいけないと考えて回りにいった。だから、パンクにはならなかったですけど、3回転になって変なこけ方をしてしまった。焦りが続いたと思います」

 その後は「後半のトリプルアクセルを決めて得点を稼がなければいけない」と思っていたという羽生。そのアクセルは、1回目は加点をもらうきれいなジャンプにしたが、2回目はパンクして1回転半に。その後、何とか1回転ループに3回転サルコウをつけて連続ジャンプにしたものの、得点を伸ばせなかった。

 結局、フリーの得点は5回転倒した中国大会を下回る151・79点で、合計229・80点。この時点で1位ではあったが、上位4人の滑走を残しているため、自力でのファイナル進出(3位以上)を逃す危機に直面した。「演技が終わった瞬間は『この苦しい試合が終わったな』というのと、グランプリファイナルを若干あきらめる気持ちでした」と羽生は言う。

 また、ミスが続いたことについては、「ケガは関係ないと思います。前の中国杯では体中が本当に痛かったけど、それでもジャンプは回っていた。今回それと同じことができなかったのは、何かが足りなかったんだと思います」と気丈に語った。

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