言い訳はいらない。羽生結弦が描く逆転優勝へのシナリオ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

11月特集 フィギュアスケート新時代 (8)
 11月28日になみはやドーム(大阪)で行なわれたNHK杯男子ショートプログラム(SP)、最終滑走の羽生結弦の前の10人の演技が終わった時点で、トップは無良崇人だった。「力を抜けば跳べるとわかっていたので、試合ではそれだけを意識していた」と言う無良は、4回転トーループ+3回転トーループをはじめ、すべてのジャンプをクリアに跳んで86・28点。

SP5位と、予想外のスタートになった羽生結弦SP5位と、予想外のスタートになった羽生結弦 羽生は、演技を確実にこなせば90点は出せるはずだった。しかし、冒頭に跳んだ4回転トーループで転倒してしまう。実は、この日の昼前の公式練習で4回転トーループを5回跳んで3回成功させ、試合直前の6分間練習では2回跳んで2回ともきれいに着氷していた。とはいえ、中国大会での激突のアクシデントでケガをしてからまだ3週間が経過しただけであり、「1週間ほど休んでから滑った時は、体が痛かったので母や父とNHK杯には出られないかもしれないと相談した」(羽生)という状態。そこから急ピッチで仕上げてきた影響があったことは否定できない。

 ふたつのスピンを丁寧にこなし、後半のトリプルアクセルも完璧に決めたが、続く3回転ルッツからの連続ジャンプは最初の着氷でバランスを崩して手をついてしまい、次のジャンプは1回転が精一杯だった。その後のステップとコンビネーションジャンプでは持ち前の技術の高さを見せつけてレベル4を獲得したものの、ジャンプの失敗が影響して得点は78・01点。SP5位と予想外の結果となった。

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