NHK杯出場を決断した羽生結弦が優勝する確率は? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 また、フリー後半の4回転トーループからの連続ジャンプを、確実性を増すために3回転ルッツ+3回転トーループに変更しても、ステップやスピンを中国杯と同じレベル以上にできれば、基礎点だけで86・39点になる。そうなれば最初の4回転をふたつとも転倒して、他のジャンプをこなしてGOE(技のできばえ点)の加点がほとんどなくても170点前後にはなり、SPとの合計は最低でも約260点になる。

 一方、今回NHK杯に出場する無良の自己ベストはスケートカナダで出した255・81点で、ボロノフとアボットは252・55点と246・35点。数字上では、よほどのことがない限り、羽生が優勝する確率が高い。

 中国大会のアクシデント後の精密検査で、幸いにも脳に異常はなかった羽生だが、ケガから回復している途中であることは間違いない。彼の将来を考えて、NHK杯は出場を回避するという判断もあっただろう。それでも、出場を決断した彼の心の中には、ファイナル連覇という目標とともに、自分が決意した進化の歩みを止めたくないという思いも強いのではないだろうか。

 また、グランプリファイナルにソチ五輪メダリストがひとりも出ない状況にしたくないという、五輪王者としての責任感もあるだろう。
※銀メダルのパトリック・チャンは今季休養。銅メダルのデニス・テンはファイナル出場を逃している。

 2012年世界選手権(ニース)では、羽生はSPでひどい捻挫をしながらも、フリーで挽回して3位に食い込んだ。そして13年世界選手権(カナダ)では、直前に膝を痛めた最悪の状態でSP9位発進も、日本代表として五輪出場枠3を確保するという強い思いでフリーに臨み、4位にジャンプアップする結果を残している。そうした逆境を乗り越えてきた経験が、今の羽生にはある。「自分の限界に挑んでいる」と語った羽生のNHK杯での演技に注目したい。

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