2013.03.13

髙橋大輔はなぜシーズン中にプログラムを変えたのか

  • 辛仁夏●文 text by Yinha Synn
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

四大陸選手権のショートプログラム、プログラムを『月光』に変更した高橋大輔 3月13日からカナダ・ロンドンで始まる世界フィギュアスケート選手権。男子は日本から高橋大輔、羽生結弦、無良崇人の3選手が出場する。

 これまで日本の男子フィギュアをけん引してきた26歳の高橋と、エースの座を狙う成長著しい18歳の羽生が繰り広げた今季の勝負は、いずれもハイレベルのものだった。特に高橋のプライドを刺激し続けた負けん気の強い羽生の急成長ぶりは目を見張るものがある。

 勝負に勝てる計算されたプログラムを引っさげてきた羽生に比べ、今季の高橋は珍しく「何をやりたいかという方向性が決まらなかった」と語る。シーズン前のプログラム作りの段階から、いつものシーズンとは違ったアプローチになった。そのほんのわずかな心の隙が、高橋の競技人生で初めてとなる、シーズン中のプログラム変更につながったのかもしれない。   

 2月の四大陸選手権を控えた1月、高橋はショートプログラム(SP)を1960年~70年代のアメリカ・ロカビリーのテイストが詰まった『ロックン・ロールメドレー』から、まったくカラーの違うクラシック曲の『月光』へ変更した。『ロックン・ロールメドレー』は、羽生の前コーチだった阿部奈々美氏に選曲、振付を依頼して作ったものだった。しかし、テンポの速さが特徴的なこの曲ではスケーティングやステップでエッジの深さや流れをきっちり出せず、「自分の気持ちがしっかりプログラムに入り込めていなかった」ことも響き、ジャッジからの全体的な評価はいまひとつで、得点も出にくかった。

 そこで、高橋が誇る「世界一のステップ」が映えるようにと、ベートベン作曲の『月光』に決まったようだ。長光歌子コーチ、ニコライ・モロゾフコーチ、そして高橋の3人で選んだ曲だという。振付はモロゾフコーチが担当したが、高橋は「今回のプログラムではまたニコライかと思われないように、彼の色を消せるようにしたい。自分と合っている彼の良さを生かせることができれば、いいプログラムができると思っている」と新たな挑戦に懸けている。

 勝負をする上でプログラム作りはどの程度重要なのか。高橋は次のように語る。