初の世界選手権で3位。羽生結弦が描く「金メダルよりも大きな夢」

  • 青嶋ひろの●取材・文 text by Aoshima Hirono
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

日本男子史上最年少の17歳で世界選手権銅メダルを獲得した羽生結弦日本男子史上最年少の17歳で世界選手権銅メダルを獲得した羽生結弦
 4回転トウループを颯爽(さっそう)と決めた後、トリプルアクセルを軽々と決めた後。思わぬところでの転倒にもめげず、2度目のアクセルを気合いで決めた瞬間。そして最後のトリプルサルコウに挑む瞬間......。

 プログラムの要所要所で、今シーズンの試合ごとに聞いてきた、羽生結弦の言葉がよみがえってきた。

「せっかく4回転を跳べたのに、4回転以外のところでミスをしてしまうなんて、ほんとうにダメですね......。特に後半のアクセルでこけるなんて、情けなかった」(中国グランプリ)

「最後のサルコウ、得意のジャンプでミスったことに、自分でもびっくりしてしまいました。途中まではなんとか集中できていたのに、あともう少し、最後まで集中しないと」(グランプリファイナル)

 フリープログラムの4分30秒、4回転とトリプルアクセルを決めた後、特に気を抜いてはいけないことを経験で学んだ。そして、今シーズン得た教訓を生かせたからこそ、初めての世界選手権フリーで、エレメンツはパーフェクトにまとめた。17歳でのこのミラクルも、何ら不思議ではない納得の結果だった。

 しかもフリースケーティングの要素だけを見れば2位、フリーのエレメンツスコア(要素点)だけなら銀メダルの髙橋大輔も優勝したパトリック・チャンも抑えて1位。そして、世界選手権初出場、初メダル。これには、驚くほかない。

 とても手が届かないと思っていたチャンに、トータルスコアでは15.05点差まで迫った。今大会、ペアで銅メダルを獲得した高橋成美&マーヴィン・トラン組に続き、素晴らしい演技を伴った、素晴らしいサプライズメダルだった。

 こうなると各国メディアから早くも聞こえてくるのは、「この年齢でもう世界のメダリストになると、この先、ちょっと大変かもしれない」という声だ。

 髙橋大輔や小塚崇彦も、シニアに上がって数年間はたくさんの失敗を重ね、辛酸をなめ、「まだまだ時間がある」「今は経験を重ねる時期」と、周囲に笑顔で励まされてきた。長いチャレンジジャーとしての時期を経て、今の彼らがあるのだ。

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