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佐竹雅昭が振り返る「熊殺し」ウィリー・ウィリアムス戦と前田日明「リングス」参戦までの激動の日々 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

【試合が楽しすぎて「笑けてきた」】

 25歳の佐竹に対し、ウィリーは40歳。試合は2分3ラウンドで行なわれることになった。2年連続で格闘技界の注目と話題を独占することになった一戦にも、佐竹はニールセンの時とは違って気持ちに余裕があったという。

「ニールセンとのキックボクシングの試合とはまったく逆の気持ちでした。空手の試合で、顔は殴らないから恐怖感がない。当時はスタミナもあって、縦横無尽に動けました。今振り返っても、僕が一番強かった時期だったと思います」

 太鼓の音と共に決戦の火ぶたが切られた。身長で上回るウィリーが圧力をかけながら、左右の突きを佐竹のボディに突き刺す。一方の佐竹は、右の下段回し蹴りなどで応戦。ウィリーの突きと佐竹の蹴りの応酬に、超満員のアリーナは沸いた。

 そこから優位に立ったのは佐竹だった。突きの連打、右の中段回し蹴り、左上段回し蹴りと多彩な技で"熊殺し"を追い詰める。その攻撃に、ウィリーの手数が少なくなったところで1ラウンドが終わった。

「ニールセンとの試合で精神的プレッシャーを乗り越えたから、この時の自分は闘うことが楽しくて仕方がなかったです。しかも、子どもの頃から憧れ続けた"神様"のような存在だったウィリーが目の前にいる。夢にまで見た選手と、対抗戦の最後に闘える現実がうれしすぎて、なんか笑けてきました」

 2ラウンド、佐竹はさらに躍動し、右下段回し蹴りでウィリーを崩していく。続く最終3ラウンドも同じ攻撃を続け、ウィリーは左足を前に出せなくなる。強烈な蹴りに、顔面が苦悶でゆがむ場面もあった。佐竹は一本こそ奪えなかったが、判定で憧れの空手家に圧勝した。

「ウィリーの突き、蹴りは、さすがでした。40歳になっても強烈で痛かったですよ。ただ、こっちは、キックボクシングの試合をした経験があったからフットワークができていて、ウィリーの技をかわして攻めることができたんです。

 だけど、ウィリーは意地でも倒れませんでしたね。そんな闘いが楽しくて仕方なくて、試合では最後までニコニコしていたと思います。『もうちょっと時間があれば倒せたかな......』とも思いましたけど、至高の時間でした」

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