日本初の格闘技イベントでメイン。青木真也は重圧にも「感謝してる」 (2ページ目)

  • 保高幸子●撮影 photo by Hotaka Sachiko

――青木選手は「生き方」に関する書籍を発表するなど、あらゆる形で自らの言葉を発信していますが、それは大衆に向けたものではないんですか?

「オレが発信することに引っかかるのは、マイノリティというか、自分が世間と"違う"と思っていたり、うまくいかないことに悩んでいたりする人。そうじゃない人の多くは、派手で、どれだけ金を使ったかってところに興奮するけど、その価値観はオレにはわからないんですよ。まあでも、そういう"メジャー感"があるものを見て救われる人もいるだろうから、そこは那須川(天心)とかに任せます(笑)」

――35歳の青木選手は、就職氷河期を経験した"ロストジェネレーション"の世代にあたります。それも意識しているんですか?

「どうやって生きていけばいいかわからない人って年齢に関係なくいると思うんですよ。たとえば、どんなに能力が高くても、上の世代が詰まっていてうまくいかないとか。そんな人たちに言葉を届けたいですね。実際にオレも、今の自分が理想と離れていることにもがいているし。もっと強くありたいし、格闘技以外でも見せたいことがある」

――アジアをマーケットにしているONEは、どういった人たちに響くものだと感じていますか?

「オレの見立てとしては、ONEの選手のストーリーの作り方は、戦後日本の力道山的なものが多い。下から這い上がっていく"サクセスストーリー"といった感じ。そういうのはこれから発展していく国の人たちに、ある程度成熟した国では現状に悩んでいる層に響いているんじゃないかな」

――そんな中で、青木選手が求めていることは?

「生き方の話になるけど、"所有しない"こと。自分以外が作ったもの、社会のシステムとかも全部フィクションなんじゃないかって思うし。たとえばお金も、みんながその価値を信じていないと成り立たないわけでしょ。そうじゃなくて、自分だけですべてを完結できることが理想。それができたら、もっと生きていることを実感できるんじゃないかと思うんだよね。

 極論で言えば家を捨てたいね(笑)。使ってない時間のほうが長いし、コストがかかって無駄じゃないですか。車に住むとかして各地を転々としたい。5年後とかに選手として試合ができなくなっても、執筆したり格闘技を教えたりして収入を得れば2、3年はそんな生活ができるんじゃないかな。自分を使って社会実験をやってみたいですね。共感してもらえるかなんてわからないけど、新しい生き方をみんなに見せながら暮らしてみたい」

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