2019.03.15

田中恒成vs田口良一。一度は白紙も
奇跡の実現へ。その軌跡を追う

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

ボクシング「田中恒成×田口良一」の軌跡@前編

“ドリームマッチ”の看板に偽りなし。3月16日、WBO世界フライ級チャンピオン田中恒成(23歳/畑中)と、元WBA&IBF世界ライトフライ級統一チャンピオン田口良一(32歳/ワタナベ)が激突する。一度は白紙となり、二度と交差するはずのなかったふたつの拳が、再び交わるまでの軌跡を追う――。

田中恒成(左)と田口良一(右)がついに拳を交えることになった「WBO世界フライ級チャンピオン」田中恒成
vs
「元WBA&IBF世界ライトフライ級統一チャンピオン」田口良一

 日本人ビッグネーム同士の対戦は、看板選手の戦績に傷をつけるリスクを負いたくないジムサイドの思惑や、放送するテレビ局をどうするかといった大人の事情により、成立することは稀だ。

 しかも、田中恒成vs田口良一の一戦は、一度は2017年の大晦日に実現しかけたものの、ふたりの選手が置かれる状況が当時とは激変したことを考えれば、今、この試合が成立するのは奇跡に近いと言っていいだろう。

 9歳という年齢差だけでなく、田中と田口はボクシングスタイルも、経歴も、性格も大きく異なる。

 しかし、このドリームマッチが成立したのは、ふたりのイズムがある一点においては、完全に一致していたからに他ならない。示し合わせたかのように両選手は口を揃える。

「強い相手と戦いたい」

 両選手の半生は、まさに対照的だ。

 空手を習っていた田中は2006年、小学5年の時にボクシングに転向。その年は、当時20歳の田口がプロデビューしたシーズンでもある。

 ただ、高校4冠に輝き、アマエリートとしてスポットライトを浴び続けた田中と異なり、田口は後に世界チャンピオンとなって脚光を浴びるまで、雑草のように日陰の道を歩み続けている。

 小学生時代、イジメられっ子だった田口は、マンガ『はじめの一歩』に憧れ、「強さがほしい」とボクシングを志(こころざ)した。しかし、高校1年で入門したジムは、友だちとの遊びを優先したため、ほとんど通わずじまいに終わっている。