入江ゆきがアピール不足の銀。レスリング50kg級の競争が熾烈になる (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 2020年東京五輪出場へ向けては、須崎に半歩リードされる形で、登坂を加えた三つ巴の状況だ。そんな立場だからこそ、このアジア大会ではきっちり優勝しておきたかったのが本音だろう。ただ、ほかの階級の選手が次々と負け、金メダルの可能性を残したのが自分だけの状況は、結果を求める以上にプレッシャーになってしまった。

 決勝の相手のビネシュ・フォガト(インド)は、入江が今年3月のアジア選手権準決勝で負けている相手。特に低い構えと体幹で、ブレない強さと速さのあるタックルは、防ぐのが難しい威圧感さえ感じさせるものだった。

 決勝ではそんな相手に、入江は序盤から攻めあぐねてしまった。互いに様子を見あってなかなかタックルを出せない展開が続いた中、開始1分25秒にいきなり腰のあたりにタックルに入られて倒され2ポイントを奪われると、そのままローリングで仰向けに返されてフォールを耐える姿勢を強いられ、もう2ポイント奪われたが、何とか抜け出して大きな危機を防いだ。

 第2ピリオドになると、なかなか仕掛けることなく守るビネシュにタックルを仕掛けてもつぶされる展開に。その後はビネシュへのコーションで1ポイントを獲得したが、攻め切れないまま時間は過ぎていく。最後は捨て身で仕掛けたが、仰向けに倒されると逆にポイントを奪われて2-6で負けた。目指していた金メダルではなく、銀メダルに悔しさが滲んだ。

「自分のスタイルを貫いていこうと思っていただけで、どういう作戦を取ろうというのはなかったですが、やっぱり始めから攻めにいけなかったですね。つぶし続けるとか、相手を動かすというのができなかった。3月のアジア選手権の後から、相手も(自分を)研究してきている中で、自分のレスリングを貫くための練習が足りなかったと思います」

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