山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過ボクサーを、どう懲らしめるか (4ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 現状では、世界中はおろか、米国内で統一ルールを作ることさえ想像できない。だとすれば、マネージャー、プロモーターが個々に対処していくしかない。そこで真っ先に目をつけるべきは、やはり"カネ"である。

「結局のところファイターの目的は金儲けなのだから、体重調整の怪しい選手にはオーバーした時の罰則を事前に盛り込んでおくべきだ。対戦相手が体重超過となった場合に、その相手のファイトマネーの一部を罰金として受け取れるシステムにしておけば、不利な条件で試合をすることになっても金銭的な恩恵は得ることができる。そんな罰則が設けられるように、敏腕マネージャーの助けを得ておくことも必要になる

 同じ『UCN.com』のスティーブ・キム記者がそう述べる通り、アメリカ、中南米の多くのボクサーたちのモチベーションは"金儲け"に他ならない。もちろん例外はあるが、世界タイトルの名誉や強さを重んじる日本人ファイターとは目指すものが異なる。それゆえ、一部の選手は世界王座を失うことよりも、無理な減量は避けて強い姿を誇示することを選ぶのだ。

 問題の根本は、ブローナー、フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)のような計量失敗の常習犯を、「視聴率が取れるから」という理由で起用し続けるテレビ局にもあるのだが、これもビジネスなのだから仕方ない。そんな背景を考慮したうえでやるべきことは、「規定の体重を作らなかったら、ほとんど稼げなくなる」という条項を契約に盛り込むことだろう。

「ウェイト調整が怪しいと判断された選手には、ファイト30日前、10日前というように細かな体重チェックを課すのもひとつの方法だ。そして、計量失敗時には大きな損害を被るような規定を試合成立時に作ること。

 昨年5月のサウル"カネロ"アルバレスとチャベスの試合では、チャベスが1ポンド(約453.6g)オーバーするごとに100万ドル(約1憶652万円)の罰金が科されるという話だった。金目的で戦うファイターに対しては、こんなシステムが機能するんじゃないか」

 オッペンハイム記者がここで指摘したカネロvsチャベス戦は、実際にモデルケースのひとつになるはずだ。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る