今年無敗の阿部一二三。リネールを超えて「世界柔道界の顔」になれ (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「組み合わせを見たときに、準々決勝の相手は想定していた。ダワードルジ選手はこれまで勝ったことがない選手で、苦手意識がないといったら嘘になる。ここでまず厳しい戦いになると思っていた。そこを勝ち切れたことでいい波に乗れた」

 準決勝、決勝は日本人対決になった。磯田範仁(国士舘大4年)との準決勝は、延長に入って背負い投げ「一本」で勝利。決勝の丸山戦では、先に指導を宣告される場面もあったが、「前に出て投げることしか考えていなかった」と振り返り、延長に入ってから大内刈りで投げ、連覇に成功した。

 世界王者として迎える2018年は年明けから単身でヨーロッパに乗り込み、個人合宿を重ねるプランがあるという。

「海外の試合に行けば英語が必要になる。柔道のためだけでなく、僕自身、日常生活の英会話ぐらいはしゃべれるようになりたい。ヨーロッパに行って練習しながら、英語の勉強も少しできたら。ひとりで行かないと意味がない。誰かに甘えてしまうと意味がない。ひとりで行って、ひとりで乗り越えることによってさらに成長できる」

 もちろん、井上康生・全日本男子監督や、所属する日本体育大学の理解を得ての武者修行だ。現世界王者とはいえ20歳の柔道家の単独行に理解を示すとは、数年前の閉鎖的な柔道界では考えられなかったことだろう。井上体制となって大きく変革した柔道界の申し子にして、2020年の東京五輪に向けた旗手が、阿部なのだ。

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