【国際プロレス伝】猪木の髪を切る暴挙。ファンの憎悪は頂点に達した (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by Getty Images

「自分たちの大将である木村さんが笑われたということは、吉原(功/よしはら・いさお)社長が心血を注いだ国際プロレスが笑われたのと同じこと。アニマル浜口の青春を、故郷を、恩師を笑われたのと同じことなんです。黙っていられるかと。ここでおとなしくしていたら、自分が歩んできた道を、自らの人生を僕自身が否定することになる。だからあのとき、僕は前へ出てマイクを握り、吠えたんです。

 木村さんという人は、そういうことも全部わかっていて、僕に道を譲ってくれたのかもしれないですね。アニマル浜口にふさわしい出番をくれたのかなぁ。木村さんは身長185cmで体重125kg、僕は178cmで体重は100kgちょっと。木村さんは何もしないで立っているだけでもプロレスラーとして絵になるけど、僕はアクションをしないといけないから。

 それに、人間というのは肚(はら)を決めると、度胸が据わるんですよ。僕がプロレスラーになると決めてから、母はよく祖父の話をしてくれました。祖父は島根県の浜田という、荒波の日本海に面したところで漁師をしていたんです。

『お前のおじいさんはね、船乗りだったけど、艪(ろ)をへし折るぐらいの力持ちだったんだよ。豪気で、仲間とのケンカで銛(もり)で刺されたときも、意識が薄らぐなか、自分の血で相手の名前や時間を書き残したそうだ。最期は嵐に巻き込まれて亡くなったけど、自分の身体をしっかりとマストに縛りつけていて、何日か経ってそのままの姿で発見された。命果てるまで、肝が据わっていた』と。

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