長谷川穂積が選ぶベストバウト。「日本武道館が水を打ったように...」 (2ページ目)
―― しかし、当時のチャンピオンのウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)は、辰吉丈一郎選手や西岡利晃選手など、名だたる日本人ボクサーを退け続けた絶対王者でした。
長谷川 ですね。相手が世界チャンピオンだと思うと緊張するじゃないですか。だから、「タイの噛ませ」や思って試合をしたんです(笑)。めっちゃ覚えてるんですけど、そう思うと全然怖さもなくて、4ラウンドくらいまで「弱いな」と。でも、5ラウンドからウィラポンが前に出てきて、そっから、ちょっとしんどかったですね。
―― 3-0の判定勝ちは、想定内でしたか?
長谷川 正直、採点はまったくわからんかったんで、この試合に関しては運がよかったなと思いました。判定負けだったとしても、不服なく受け入れていたし。今日は運がよかったなと。
―― なるほど。
長谷川 ただ思い返せば、ちょうど僕がジムに入ったころに、ウィラポンが世界チャンピオンになったんです。「いつか挑戦したい」って言ってたんですよね。みんな笑ってましたけど。ウィラポンはそのまま6年間チャンピオンを守って、本当に挑戦できた。言霊なんですよ。思ったこと、なりたいこと、全部叶ってきてるんで。デビューしたとき、友だちに「チャンピオンのまま引退する」とも言ってたんですよね。
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