吉田沙保里、4連覇ならず。「時代」は妹分たちへと引き継がれる (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 結果、1-4でタイムアップとなり、4連覇の夢は断たれた。試合後、吉田は「勝てると思ったのに、落とし穴にハマった」と語り、「申し訳ありません。ごめんなさい」と何度も謝りながら涙を流した。

 敗れたとはいえ、吉田は2014年に亡くなった父・栄勝(えいかつ)氏の教えを守り、積極的に攻め続けた。しかし、決勝では最初の片足タックルでポイントを奪えないと、その後の2回の片足タックルも不発。それが、4連覇のプレッシャーなのか、年齢からくる肉体的な問題なのか。即断はできないが、吉田対策を十分に練り、タックルの防御を磨いてきた相手に通じなかったことだけは間違いない。

 決勝で敗れ、2位に終わった吉田にとって、表彰式は残酷である。3位決定戦を制し、勝って終わって意気揚々と銅メダルをもらいに行く2選手に続き、53キロ級を制して会場中から拍手・喝采を受けながら満面の笑顔で行進するチャンピオン。最後に、試合で敗れたばかりの吉田が涙を流しながら歩き、表彰式へと向かっていく。

 表彰台に上がった吉田は、正面、そして左右、最後に後ろの観客に向かって深々と頭を下げた。2002年、ギリシア・ハルキスで行なわれた世界選手権で初優勝を遂げたときから14年、長きにわたって続いた超ロングランの芝居の幕を下ろす女優のように。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る