伊調馨の目にも涙。姉も案じた「4連覇・年齢・母」の葛藤を超えて (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 厳しい戦いになる――。アテネ、北京でともに戦い、2大会連続・銀メダルを獲得した姉・千春はそう案じ、大会前に3つのキーワードを挙げた。

「4連覇」
「年齢」
「母」

 4連覇のプレシャーは、どれほどのものなのか。「あのカオリン(馨)でも、3連覇のときとは比べものにならないプレシャーに襲われるのではないか......」。姉はそう心配した。

 今年で32歳。最近はケガが多くなり、治りも遅く、疲れも溜まりやすくなってきた。オリンピックの舞台で決勝まで進めば、1日で4試合を戦うことになるが、「ロンドンまでのように、パワフルに戦い抜けるか......」。試合前に伊調から、「ロンドンのときは直前に足首のじん帯を損傷したけど、今回はケガなし。痛めているところもなく、ここ数年なかったコンディションのよさ」と聞き、胸をなでおろした。

 2014年11月、ずっと応援してくれていた母が突然、亡くなった。伊調は、「母の遺言でもある『死んでも勝つ』ということと、プラス自分のレスリングを追求していきます」と誓ったが、「それが今までにない気負いにならないか......」と考えたという。ただ、「母はこの会場のどこかにいて、カオリンを見守っていてくれている」と、姉は感じた。

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