太田忍、16年ぶりの銀。地獄を見た日本グレコローマンに新星誕生 (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by JMPA

 4点を追う展開となった第1ピリオドは、相手を振り回し、常に動かし続けてスタミナを消耗させた。そして、勝負と決めた第2ピリオドに入ると、太田は一気に攻め立てた。

 まず、ゾーン際で投げを打って2点を奪取。肩で息をしているのが遠目でもわかるほど疲れたスーリヤンはまったく攻めることができず、その消極性から3回目の注意を取られ、さらに太田に1点を献上。太田はなおも攻め続けるべく、あえてグラウンドでのパーテールポジション(※)を選択せずに相手を立たせ、休ませずに試合を再開した。そして残り10秒、鋭いタックルでスーリヤンを場外まで押し出して2点を獲得。結果、5-4で大逆転勝利を飾った。

※パーテールポジション=一方の選手がマット中央で両手・両ひざをついて四つんばいとなり、もう一方の選手がその背後から攻める構え。一方の選手が消極的なプレーで審判に警告されたあと、罰則としてこの構えが命じられる。

 世界選手権の出場経験すらない22歳の太田は、いわば今回が「世界デビュー戦」。しかし、それをまったく感じさせない快進撃を続けていった。2回戦では、ロンドン五輪・5位(60キロ級)にして世界ランキング3位のアルマト・ケビスパエフ(カザフスタン)に反り投げを極(き)めて6-0と圧勝。さらに準々決勝では、2014年世界選手権・銅メダリストのスティグ・アンドレ・バルゲ(ノルウェー)にもがぶり返しや胴タックルを炸裂させ、4-0と連続して完封勝ちを収めた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る