若手が台頭。リオ五輪に向けて柔道界の活性化なるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文text by Oriyama Toshimi

 そして「世界ジュニアで負けて悔しかったが、外国人選手との試合で組み手や気持ちの面で落ち着いてできないという課題が残った。でも今日は相手の組み手や動き、技がすごくよく見えたので、その面では成長できたと思います」と言うように、決勝でもゴラン・ポラック(イスラエル)を相手に1分42秒に大外返しで"有効"を獲得。その後も攻め続けて付け入る隙を与えず、シニアの国際大会で初優勝を果たした。

「海老沼さんとの試合は思い切った柔道をして楽しんで、世界チャンピオンの強さを経験できたらいいなと思っていました。今日の自分は失うものもなかったから、気持ちの面でも落ち着いて自分の柔道に集中できた。東京五輪ではもちろん金メダルを狙うが、今大会の優勝でリオデジャネイロ五輪も近づいてきたと思うからリオでも優勝を狙ってみたい」

 こう話す阿部を井上康生男子監督は「今日は怖いもの知らずで行けたが、プレッシャーを感じるようになってからどう成長していくかが問題。技の数を増やしたりそれを磨いていくなど伸ばさなければいけないところはあるが、大きな可能性を持った選手であるのは事実。3位決定戦で負けた海老沼も1大会で2度負けたのは久しぶりだろうから、それをエネルギーにしていくと思う」とこれからの二人に期待する。

 一方女子48kg級の新旧対決は頂上決戦でもあった。浅見八瑠奈(コマツ)は10年と11年世界選手権を連覇して13年は2位。対する19歳の近藤亜美(三井住友海上火災)は今年の世界王者。ともにオール一本勝ちで決勝まで駒を進めていた。

 浅見は昨年の世界選手権で右ひじ靱帯を痛めて以降休養し、今年8月の実業団個人選手権で復帰すると、11月の講道館杯で優勝。それに対して近藤は4月の全日本体重別初優勝のあとは、8月の世界選手権だけでなく10月の世界ジュニアでも優勝して波に乗っている選手だ。

 その勢いは決勝でも前半から出た。試合開始早々は、近藤が突っ込んで激突するような組み手に。

「釣り手を持ったら絶対に落とされるのはわかっていたので、相手をつかんだら迷わずに思い切ってというのが今日の目標だった」と近藤が言うように、開始11秒で巴投げを仕掛けた。「巴投げをかけてくるのわかっていた」と言う浅見もいったんは耐えたが、そのまま強引に体を返して近藤が"有効"を奪った。

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