【ボクシング】TKO勝ちも、村田諒太に課せられた多くのノルマ (3ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao 矢野森智明●写真 photo by Yanomori Tomoaki

 そしてもうひとつ、ディフェンスに関しても改善の余地はありそうだ。アマチュア時代同様、この日の防御はブロックが主体だったが、ガードの間を突かれる場面も散見された。ヘッドスリップやスウェー、ウィービングなど、幅広く身に着けて使い分けることも必要になるだろう。

 プロ転向2戦目の選手に向けた注文としては厳しいものかもしれないが、村田は8月にプロ転向を果たしたばかりのルーキーであると同時に、すでに日本と東洋太平洋では1位、WBCでは世界ランキング18位に名を連ねている選手でもあるのだ。本田会長は、「本来ならば4回戦を4試合、6回戦を4試合といったペースで消化し、それから状況を見て8回戦、10回戦という手順を踏むのが理想。だが、トップランク社(村田が契約している米国の大手プロモーション)は早く勝負するつもり」と明かす。今回の8回戦の相手も、その路線に沿っての選択だった。村田には1試合で数試合分の経験を身に着けることが求められている。

 次戦は来年2月22日、中国のマカオで行なわれることが内定している。トップランク社主催のイベントで、同じ五輪金メダリストであるフライ級のゾウ・シミン(中国)、ヘビー級のイゴール・メコンツェフ(ロシア)との揃い踏みになる予定だ。階級は違うものの、技量や成長度が比較されることになるだろう。

 当然、ここでもトップランク社が対戦相手を選ぶことになる。村田の海外進出の第一弾であり、トップランク社にとっても売り出しの一歩ということを考えれば、イージーなマッチメークになることはないとみたほうがいい。今回同様、数試合分の経験を味わわせてくれる相手が選ばれるはずだ。その方針は今後も続くことになるだろう。まるで、各地域代表と次々にトーナメント戦でぶつかる五輪や、世界選手権のように……。

 以前、村田自身は、「世界は3年のスパンで考えている」と話していたが、本田会長は、「3年待ってくれるならば(世界王者に育てる)自信はある。でも、トップランク社はもっと短いスパンで考えているので、早い進歩が求められている。10戦こなした時点で村田がどこにいるか、それがひとつの目安になる」と話す。そのためにも今後の一戦一戦は、極めて重要なものになっていくはずだ。

「金の拳」に課せられたノルマは、その期待値同様、とてつもなく大きいものといえる。

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