【ボクシング】1ヶ月に世界戦11試合。その勝者、覚えていますか? (3ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao photo by AFLO

 それにしても、なぜ、これほどまでの数の世界戦が身近で行なわれることになったのだろうか。まずは、2008年に女子ボクシングが正式認可されたことが挙げられよう。日本はこの数年、常に5人の女子王者を抱えている。そして、それ以上に大きな理由として考えられるのは、日本が今年4月から従来のWBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)に加え、新興のIBF(国際ボクシング連盟)とWBO(世界ボクシング機構)に加盟したことであろう。現に上記カード11試合中、4試合がIBF、WBOの世界戦なのである。

 また一方で、競技人口の減少も深刻な問題となっている。2004年にはJBC管轄下のプロライセンス所持者は3300人を超えていたが、以後は年々減り、最新のデータでは2300人を割り込んでいる。つまり、この10年で日本のプロボクサーは3分の2に減少しているのである。ボクシング業界がジュニア世代の育成に力を注いでいるのは、こうした事情とも無関係ではない。

 それでも、世界チャンピオンが15人も存在する。1ヵ月間に、11試合もの世界戦に選手を送り込んでいる。しかし、それを見る人も、やる人も減っている――。このねじれ現象こそが、日本ボクシング界最大の問題点だ。

 ボクシング観戦と縁遠くなった人の多くは、「認定団体が多いし、ルールも違う。誰が本当のチャンピオンなのか分からない」と困惑したことが主たる原因だと明かしている。たしかにメジャー4団体のうち、WBCだけは途中で採点を公開しており、バッティングで一方が負傷した場合は、負傷していない選手に減点を科している。一方、WBAは1ラウンド中に3度のダウンで自動的にKOとなるが、他の3団体は「ノー・スリー・ノックダウン制」を採っている。また、IBFだけは前日計量のほかに当日にも計量を課している――。団体ごとの差異を挙げていったら、きりがないほどだ。

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