2013.03.04

【総合格闘技】UFC JAPANで伝えたかった、
PRIDE&K-1王者のメッセージ

  • 石塚 隆●構成 text by Ishizuka Takashi
  • photo by NAOKI FUKUDA / WOWOW

身長差などお構いなしに突進し、鮮やかなKO劇を演じたマーク・ハント 現在と過去が、鮮やかに交錯した時間――。3月3日、さいたまスーパーアリーナで行なわれた『UFC JAPAN 2013』で最も光り輝いていたファイターは、かつて日本の格闘技ブームを牽引した、PRIDEとK-1の王者だった。

 1年ぶりとなるUFC JAPANに集まった観衆は、約1万5000人。総合格闘技の地上波放送がなくなった今、UFCに足を運ぶような人は、テレビで何となく見ていたライト層ではなく、筋金入りのファンだ。そんな観衆が熱を失い、沈黙していた。セミファイナル(第10試合)を迎えるまでは……。

 9試合を消化し、日本人選手の出場した6試合の戦績は3勝3敗。レベルの高い攻防に、日本人選手たちは苦戦していた。それでも経験豊富な岡見勇信などは、UFCで戦うためのスキルとスピード、スタミナを兼ね揃えていたため、戦術としてミスを犯さない慎重なスタイルで勝利をモノにした。UFCは、スポーツ色が濃いゆえに勝利至上主義だ。負けが重なれば主催者からドライにリリース(クビ)を宣告されるので、選手たちはKOよりも確実な勝利を狙う。

 一方、五味隆典は昔ながらのスタイルだった。ときにガードを下げ、アグレッシブな打撃で『スカ勝ち(※)』を狙う。しかし、ディエゴ・サンチェス(アメリカ)相手に前へと出るが、距離感を保たれて空回りが目立つ。激しく攻め続ける五味を見て観衆は盛り上がるも、待望のKOは実現せず、判定で敗れてしまう。

(※)スカ勝ち=KO勝利など、誰が見てもスカッとする勝ち方

「やはり、一世代前のスタイルではUFCで通用しないのか?」と、多くの観衆は思ったに違いない。それほど、ここ数年で総合格闘技の世界は、総体的なレベルアップがなされている。

 そんな重々しい空気を打破したのが、マーク・ハント(ニュージーランド)だ。セミファイナルで218センチを誇る長身ファイター、ステファン・ストルーブ(オランダ)と対戦。40センチの身長差にもかかわらず、ハントは持ち前のハートの強さでガンガン前に出てパンチを繰り出し、ストルーブの顔面をとらえていく。また、寝技を得意とするストルーブにグラウンドへと引き込まれるも、ハントは冷静に対処し、決定的な形にはさせない。ハントが唯一、K-1出身者としてUFCで成功できたのは、この寝技における技術上達にある。自ら極めるまでの技術はないが、相手に攻められれば専守防衛。そして自分の有利な体勢になれば、パウンドで攻撃をする。