eスポーツのチームオーナーが語るリアル。「選手を残してオーナーが失踪する」ことも (2ページ目)

  • 都合亮太●取材・文 text by Togo Ryota
  • 小沢朋範●撮影 photo by Ozawa Tomonori

西原 あったね、その事件。eスポーツの黎明期だったから、アマとプロの境目が曖昧だったように思います。特に『PUBG: BATTLEGROUNDS』は盛り上がっていたから、いろんなチームが生まれる反面、トラブルも多かった。とはいえ、選手を残してオーナーが失踪するなんて聞いたことがありませんでした。

甲山 僕らも「まさか」と思って、なにか事情があるに違いないと考えていました。しかしいくら待っても連絡はこず、リーダーとして選手を集めてきた自分が責任を取る形でオーナーになる決意をしました。「給料は俺が代わりに出す」と他の選手を説得し、しばらくは選手兼オーナーとして活動を続けましたが、2018年12月に会社を登記して選手を引退。オーナー業に注力していくことにしました。

「REJECT」や以前のチーム名「All Rejection Gaming」には「拒否」という意味合いがあって、この頃の自分はまさにそんな心情でした。「大人たちは汚いのが当然だから周りを信頼しちゃいけない」「頼れるのは自分と仲間だけ」、そんな反骨精神を原動力にしていました。西原さんとの出会いもあって他のチームオーナーの熱意を知り、今では「一緒に市場を開拓する仲間」と意識が変わりましたね。

――どちらもさまざまな苦労を経て現在に至ったわけですが、現在のチーム運営はいかがでしょう?

西原 苦労はずっと続いています(笑)。でも、チームオーナーとしての仕事はかなりエキサイティングなんですよ。僕は今年46歳になるんですが、デザインのディレクション仕事でやりとりするプロデューサーなど周りもそれなりの年齢で、いわゆる同年代や少し下の世代の方々と会話することが多いんです。

 しかしeスポーツチームのオーナーになると、高校生や大学生くらいの若者とコミュニケーションすることが普通です。僕の年齢でこんな環境はほとんどないと思うので、若い子といろいろぶつかり合っている日々がすごく楽しいです。

甲山 自分は逆に年齢がネックになることがあります。3月で23歳になるのですが、この年齢でのマネジメント業はかなり難しいです。自分より年上の選手と契約することも珍しくなくて、西原さんのような「大人の包容力」「懐の深さ」がないことで悔しい思いをすることもあります。

 ただ僕の場合は選手と一緒に成長していく感覚が、他のチームのオーナーよりも強いと思います。僕も選手も経験が不足しているなかで、一緒に苦労しながら等身大で成長を感じられるのが楽しいですね。

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