【男子バレー】ベテラン山本智大の飽くなき向上心「まだいける」「謙虚さを忘れず、もっと上を」 (3ページ目)
【「声かけ、連携、指示出し、人との信頼関係」】
たとえ調子が悪くても、これ以下は下げない。その地力とバランスこそ、ハイレベルな守備者が目指すところか。
「バレーは小1からずっとやっていますけど、僕にはこれまで、"やばい、どうしようもない"と感じた試合があまりないんです。安定したプレーが自分の強みかもしれません。ディグを得意とするリベロとしては、スーパーなプレーも求められますけど、"普通にセッターに返す"とか、当たり前を当たり前にプレーするっていうのがすごく大事で」
普通にやる。それはやるべきことを怠らずにやることだが、それが一番難しい。
「ブロックフォローひとつとっても、やり続けることが信頼につながるんです。そこをなおざりにすると、日本代表にはなれない。目立つプレー以上に、普通を続けられるか。日本には僕や小川だけじゃなく、良いリベロが多く出てきましたけど、声かけ、連携、指示出し、人との信頼関係など、全部がつながらないと代表で活躍するのは難しいと思います」
かつて、山本に「タイムマシンで過去に戻り、バレーを始めたばかりの自分に会えたら、何と伝えますか?」と尋ねたことがあった。彼は「何も言いません。手は何ひとつ抜いてこなかったんで」と答えていた。その実直さと自負心が彼の本性だろう。
そこで最後に訊いた。
──タイムマシンで、天寿をまっとうしようとしている未来の自分に会えたら、今の山本選手に何と言ってくると思いますか。
「えー、どうですかね。今の僕への言葉ですよね? うーん、『謙虚な気持ちを忘れず、もっと上を目指せ』とか、ですかね。リベロ賞をもらって、オリンピックも出て、とかありますけど、自分の中で"まだいける'と思っているので。
単純に、"今のは取れた"、"まだいける"っていうのがあるんですよ。年齢的にもリベロは比較的長くやれる。やれるところまでやって、日本バレー界に貢献したいです。リベロとしてやるべきことはまだたくさんあるので、上を目指したいなって」
31歳の山本はそう言って、満月が柔らかく輝くような笑みを浮かべた。その光は闇夜も照らす希望のひと筋か。
リベロ山本、底はまだ見えない。
(了)
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山本智大(やまもと・ともひろ)
1994年11月5日生まれ、北海道江別市出身。小学1年生のときにバレーボールを始め、酪農学園大附とわの森三愛高、日本体育大を経て、2017年にFC東京(現・東京グレートベアーズ)に加入。2018年に日本製鉄堺ブレイザーズへ移籍するとレギュラーに定着し、2019年に日本代表に初選出された。東京、パリと2度の五輪のほか、世界選手権に5回、ネーションズリーグに5回、ワールドカップに2回出場。日本随一のリベロの座を確立している。2024-25シーズンのSVリーグのベストリベロ、2025年世界クラブ選手権のベストリベロにも選出されている。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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