パリオリンピック男子バレー 石川祐希は重圧とどう対峙しているか「勝つのは難しいと実感」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「1セット目はよかった」】

 こうした規格外のプレーの連続は観客を沸かせ、味方を勇気づけ、敵を動揺させる。気運を呼び寄せるのだ。

 そして19-20と拮抗した場面で、日本のブロックのタッチをめぐって、ビデオ判定になる。ノータッチの判定で同点になったが、アルゼンチン側は「ビデオでも触っている」とキャプテンが猛抗議。イエローカードが出され、さらにその直後にはベンチにレッドカードが出た。これで1点を追加した日本は21-20とリードしたのだ。

 アルゼンチンの自滅かもしれないが、逆転を誘発したのは石川が与えた脅威だった。破格のプレーはエースにふさわしい。

 ただ、石川自身は自分のプレーについてよりも、チームマネジメントの志向が強い証言をしていた。

「ドイツ戦後にも話したと思うんですが、ブレイクチャンスで取りきれていなかったので、そこを課題に挑みました。今日の1セット目はよかったですね。ブレイクも、ドイツ戦以上にものにできていたのかなと思います。ただ、ブレイクチャンスやアタッカーのミスも目立った試合だったと思うので、僕も含めて、そのパフォーマンスを修正していかないと」

 さらに、石川は戦略的な話もしている。

「オリンピックは、サーブも大事な要素になると思います。今日の1セット目は、西田選手のサーブが走っていたので、サーブって大事だな、って思いましたね。どれだけサーブを決めていけるか。僕たちの前に試合をしていたブラジルとポーランドも、最後は(ポーランドのウィルフレド・)レオン選手が2本サーブを決めて締めていたんで」

 キャプテンというポジションが与えるものなのか、顔つきまでリーダーの責任感を感じさせた。

「自分たちは、この大会を勝ちにきたので、そのために戦うつもりです。いろいろと考えても仕方ない。限られた試合でどれだけベストを尽くせるか、自分たちのバレーができるか。結果以上にそこが大事ですね。それがなければ、結果もついてこないので」

 パリ五輪が開幕する2日前、石川はそう話していたが、勝利の方程式は出来上がっている。

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