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錦織圭はベストなタイミングでマイケル・チャンをコーチに選んだ 杉山愛「ピッタリな指導者に出会えるのは本当に大事なこと」 (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Akatsuki Uchida

【錦織は少し顔を曇らせて言った】

 1本のショット、ひとつのテクニックを単独で見るのではなく、目指すテニスの完成図を思い描き、欠けているパーツを獲得し、補完していく。

 そのようなパーツを探すうえで不可欠なのが、コーチなど第三者の視点だろう。錦織は、そうした外部の情報を取捨選択する能力にも長けていると、杉山さんは見る。

「今の時代は情報があふれ、選手に対していろいろと言ってくる人も多い。そのなかで一番大事なのは、信頼できる人を周りに置くことだと思います。この人の言うことが一番しっくりくるという、信頼関係が大切になってきます。

 そのような信頼できる人との取り組みをベースとしつつ、同時に、ほかの人にも耳を傾ける柔軟性も必要だと思います。ひとりの意見だけだと、どうしても偏ってしまうこともある。かたくなになってしまうと、ほかの人からの大切な情報を逃してしまうかもしれませんから。

 ただ、あまり多くを聞きすぎると混乱するでしょうし、正反対の意見を言ってくる人たちもいるので、そこが難しいところですが......」

 この杉山さんのお話をうかがって思い出したのは、2011年に錦織がブラッド・ギルバートをチームに招いた時のことだ。ギルバートは世界4位に至った、往年のトッププレーヤー。だが、それ以上に彼の名が知られるのは、アンドレ・アガシ(アメリカ)らを覚醒させたコーチとしての名声だ。

 ギルバートの勝負哲学は、彼の著書の表題でもある『ウイニング・アグリー』に集約される。直訳すれば「醜(みにく)く勝つ」。一発の強打がなくてもいい。見た者の歓声を誘う華麗な身のこなしも必要ない。心理戦も含めた戦略性で勝つ術を、ギルバートは選手たちに授けてきた。

 そんなギルバートと、ツアーコーチのダンテ・ボッティーニとのふたり体制について、2011年の夏頃、錦織に尋ねたことがある。その時、彼は少し顔を曇らせて「ふたりとも我が強いので、大変ですね」と言った。指導方針を巡ってふたりは正面から対立し、どちらも折れる気配がないというのだ。

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