大坂なおみは復帰後、なぜ勝てなくなった? 世界トップ選手が口々に言う「同じテニスを続けていてはダメ」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【大坂が世界1位だった5年前との違い】

 もちろん、出産からまだ14カ月しか経っていない事実を思えば、ここまで戻ってきたことは十分に成功だと言えるだろう。大坂自身も「まずは以前の自分に戻り、それを超えていかなくては」と言う。

 ここでひとつ、俎上にあがる議題は「大坂が世界1位に上り詰めた2019年初頭の状態に戻ったとしたら、はたして頂点に立てるのか?」。それは、この4〜5年間で女子テニスのレベルは上がったのか、の問いとも同義だろう。

 では今、最前線に身を置く選手たちは、ここ数年の変化を感じているのだろうか? 現在世界ランキング2位のアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)は言う。

「私自身が成長しているので客観視するのは難しいが、間違いなく女子テニスは成長していると思う。皆が精神的に強く、どうプレーすべきかを知っている。動きの面でもスピードが上がっている。スタッツ(統計)も使えるので、互いが互いをよく知るなかで、どちらが重要な局面で、よりプレッシャーに対応できるかの勝負になる」

 そのサバレンカに追われる立場の世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)は、次のように私見を語った。

「5年前と比べて、テニス界全体のレベルが上がったかどうか、私の立場で判断するのは難しい。ただ、1位にいるためには上達し続けなくてはいけないと感じている。

 私が強くなり始めた頃は、みんな、私のプレーがまだわかっていなかったと思う。でも、2023年からは追われる立場になり、標的にされ、プレーを分析された。だからこそ常に新しいことを学び、プレーの幅を広げ、たくさんの選択肢を持つようにしないといけない。同じテニスを続けていては、やがて分析され、勝つのはどんどん難しくなる」

 女子テニスを牽引するふたりの言葉から浮かび上がるのは、情報も増えた今の社会で上位に居続けることの困難さ。そして、プレーの幅を広げることの重要性だ。現にサバレンカは昨年のオフシーズン以降、「スライスを打ってネットに出たり、ドロップショットを打ったりと、バリエーションを増やす練習をしてきた」と言った。

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