大坂なおみが成し遂げた3人目の偉業。レジェンド選手たちに並んだ勝負強さ (3ページ目)

  • 神 仁司●文 text by Ko Hitoshi
  • photo by AAP/AFLO

「自分自身のことを考えていない時のほうが、よりいいプレーができているように感じます。それが道理にかなっているかはわからないけれど、よりモチベーションが上がります」

 自分自身のためだけではなく、チームメンバーの喜ぶ顔を見たいというのは、何とも心優しい大坂らしいモチベーションなのだが、それとは裏腹に、グランドスラムの決勝では負け知らずの強さを誇っている。

 これで大坂は、4個目のグランドスラムタイトルを獲得した。1968年のオープン化(プロ解禁)以降、グランドスラムで4回優勝した女子選手は15人。さらに、初回から4回目のグランドスラム決勝で4連勝しているのは3人しかおらず、女子ではモニカ・セレス(当時ユーゴスラビア)と大坂、男子ではロジャー・フェデラー(スイス)だけという偉業だ。

 今回の優勝によって、大坂のWTAランキングは2位に浮上するが、「まったくランキングのことは考えていません。いいプレーをすれば、ランキングはついてくる。そう自分に言い聞かせています」とこれまでの姿勢をまったく崩さない。

 一見すると、大坂には欲があまりないようにも見受けられるが、勝ち負けだけで自分の価値を計るのではなく、今自分のできることに集中して挑戦を続けていきたいのだ。

「(グランドスラム優勝)5個目をトライしていきたい。ビッグピクチャーを抱いているわけではなく、今この瞬間を大事にしたい。自分自身にプレッシャーや期待をかけたくないから。今は自分がコントロールできることだけをしていくだけです。ハードに練習すれば、自分自身にチャンスをもたらすことができるでしょう」

 コート上では、持ち前のパワーとスピードで強さを感じさせる大坂だが、勝負が終われば試合の時とは別人のように、言動には思慮深さがあり、相手を思いやる優しさがにじみ出ている。それは、大坂が21世紀に作り出す、今までにない新しいチャンピオンの姿なのかもしれない。そして、彼女ののびしろのあるテニスからは、"大坂なおみ時代"の到来が近いことも予感させられる。

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