「大坂なおみのマスク」に日本の多くの選手が沈黙。高橋美穂「残念です」 (4ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko

 山下会長はJOCの理事会を報道陣に非公開にすると決めた人物だが、これも果たして本人の意向であったのか、疑義を感じずにはいられない。そしてそれに反対したのはすべて女性の理事=小谷実可子(シンクロ)、高橋尚子(マラソン)、山口香(柔道)、山崎浩子(新体操)であったことも知られている。

「スポーツ界だけで食べている場合はどうしても保守的にならざるを得ないと理解しています。女性のほうが、しがらみがないのではないでしょうか? そこはよくわかりませんが、私も言い続けるしかないと思っています。透明性を持たせることや改善すべきことを考えている人も多いです。スポーツの当事者が現状に甘んじて発言を止めてしまったら、そこで進歩は終わってしまいます」

 ここで高橋は兵庫サッカー協会の元事務局長が在日コリアンの関係者に対して差別的な言動をしていたという事件についても言及した。スナックで朝鮮サッカー協会の男性に対して「朝鮮、かかって来いや」などという挑発をしたことが事実であったと発覚したにも関わらず、三木谷研一兵庫サッカー協会会長は処分を下さず、朝鮮協会の幹部に、私的な問題にとどめて欲しいと持ち掛けていたことが、明るみに出た。言うまでもなくFIFA傘下にある日本サッカー協会は「差別の禁止」を提唱している。

「以前に比べて、スポーツ界においてのコンプライアンス、ガバナンスの整備については確かに進んでいます。しかし、むしろそのことで表面上の体裁を整えてしまうことだけに汲々(きゅうきゅう)としているという印象も受けてしまいます。うたっていることの本質ではなく、書類や制度の上だけでのガバナンスでは本末転倒ですね。

 兵庫県サッカー協会の会長は、その責任を担っている以上、調査して事実が確認できたのなら、しっかりと謝罪することです。ダメなことこそ表に出す。過ちは誰にでもあるし、そこから学んで行ければスポーツ界はまた評価されます。アスリートファーストを推進するアスリート委員会やスポーツ界から人権侵害を根絶することを目指すスポーツ法学会もせっかく存在しているのならば、この本質に取り組んで欲しいです。そうでなければ、そこにあった問題がなかったことになってしまいます。

 私自身、スポーツは平和を作るためにあると学んで来たし、差別をなくそうと競技団体が声を出し続けることは、結果としてスポーツを守ることに繋がると思うのです」

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