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テニスファンの心を奪う西岡良仁。
170cmで世界と戦う卓越した分析力 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 錦織の欠場により日本のエースを務めた西岡は、対フランス戦で世界10位のガエル・モンフィスと対戦。そのエース対決で、彼はモンフィスを完全に術中にハメた。

 コート狭しと走って相手の強打を拾いまくると、機を見てフォアの強打を打ち込み、幾度もネットへ詰めては柔らかなボレーを沈めた。サービスゲームでも、時速130キロ台のファーストサーブを打ったかと思えば、次には204キロのそれを豪快に叩き込む。フィジカルで勝るモンフィスは力でねじ伏せようとムキになるが、肩に力が入るほどに球筋はフェンスに届きそうなほどに乱れた。

 混乱するモンフィスを尻目に集中力を高める小柄なファイターは、最後はサービスウイナーで"西岡劇場"の掉尾を飾る。終わってみれば、硬さのあった最初のゲームを落とした以外は、一度もブレークポイントすら許さなかった。

 その翌日、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れた西岡は、「全然歯が立たなくて、やはり自分との差を痛感した」と、どこかすっきりした顔で振り返る。

「自分のどこが強くて、どこが足りないか。ジョコビッチ選手のような世界のトップ中のトップとやるにはどうすべきかを、今回のデビスカップで感じられた。今後のツアーでも彼らのような選手と戦う機会は増えていくだろうし、そうあるべきだと思っている」

 未来の成長を確信する彼は、「僕にとって、いろんなものを得られたデビスカップだった」と、明瞭な口調で断言した。

 優れた観察者である彼は、鋭敏な視線を自らの内にも向ける。

 その彼の目に映るのは、敗戦のコートから常に何かを持ち帰り、勝利に変えてきたという事実だ。

 価値ある敗戦と、歓喜の勝利の集積で描かれた右肩上がりの成長曲線を見つめながら、その続きを紡ぎにいく。

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