錦織圭、悔やむ節目の第3セット。「あの第5ゲームを取れていたら...」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第3セットにも勢いを持ち込んだ錦織は、第5ゲームで3連続のブレークチャンスを掴む。しかし、直後の打ち合いでは、リスクを負ってストレートに放ったバックハンドが大きくラインを逸れていった。

 ボールがラケットを離れた直後に、早くも「あー」と失意の声が、そこかしこからあがる。これを含めて4連続でポイントを失った錦織は、ブレークの機を......そして結果的には、この試合最大のターニングポイントを逃す。直後のゲームを錦織が落とし、第3セットはジョコビッチの手に渡った。

 それでもまだ、第4セット最初のゲームをブレークしたとき、錦織に挽回のチャンスはあるかに思われた。だが、その直後のゲームで、ジョコビッチはこれまで以上にフォアハンドで攻勢に出る。

 ラインをかすめる強打でブレークポイントを手にすると、続く打ち合いでは錦織を左右に走らせ、浮き玉を誘った。滞空時間の長いボールを叩き込むべくジョコビッチが構えたとき、客席から「That's it(これで決まった)」の声がもれる。それはあくまで、この1ポイントを指しての言葉だが、まるでその後の展開を暗示するようでもあった。

 ブレークバックに成功したジョコビッチは、一気に攻勢に出て、やや疲労の色を見せ始めた錦織を突き放す。最後は快音を響かすジョコビッチのフォアの逆クロスが、2時間34分の戦いに終止符を打った。健闘を称える温かい拍手を背に受け、ラケットバックに結びつけたプレーヤー身分証を揺らしながら、錦織はセンターコートの通路奥へと姿を消した。

 敗戦の約1時間後――。会見室の錦織は、試合のターニングポイントとなった第3セットの第5ゲームを淡々と振り返る。

「おそらくはあそこが、最大のチャンスだった。ただ、あの場面で彼はすばらしいプレーで3ポイントを奪った。もし、あのゲームを取れていたら、試合は別のものになっていたかもしれない」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る