どんでん返しのスイッチを入れた錦織圭。敗色濃厚から「怒濤の攻め」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 だが錦織は、ここを「畳みかける」機だと見極める。続くサービスゲームでは、ポジションを高く保ち、小刻みなステップでボールの背後に入りこむと、体重を乗せた重いボールを打ち込んでいく。ラブゲームでキープに成功すると、続くゲームは15-0からフォアを軽く振り抜き、前に出てくる相手の足もとにボールを沈めた。

 後ろで打ち合っても、前に出てもポイントの獲れない挑戦者は、徐々に手もとのカードを失っていく。直後に犯したダブルフォールトは、スコア上はまだ五分ながら、切迫する焦りが具現化したものだろう。このゲームもブレークした錦織は、続くゲームではストロークで押し込み、フォアのウイナーを、そして最後は相手の逆を突く鋭いボレーを決めて、またもラブゲームでキープ。怒濤の攻めで4ゲーム奪取したこの間、錦織は相手にわずか3ポイントしか与えなかった。

「試合をやっていると、そういう流れがやってくるときもある」

 勝者は2時間14分の逆転劇を、淡々と振り返る。試合中に治療を受けた左足については、「疲れてくるとたまに出る。しっかり治療すれば大丈夫だと思います」と多くは語らなかったが、試合終盤の動きを見るかぎり、ここは本人の言葉をそのまま受け止めていいだろう。

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