全米オープン直前「ジョコビッチ包囲網」で勢力図に変化あり

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「やっぱり、今の彼は強すぎる。彼に敵う選手がいないのが現状なので、僕も含めて、彼を倒すことがトップ10選手の目標かなと思います」

 錦織圭にここまで言わしめた「彼」とは、世界ランキング1位にして、年間ポイント獲得レースでもトップを独走するノバク・ジョコビッチ(セルビア)だ。今季の優勝もすでに6大会を数え、しかもそのすべてがグランドスラム2大会を含むマスターズ1000以上のグレードのトーナメント。「強すぎる」という錦織の言葉には、誇張も先入観もない。

全米オープン前のマスターズ2大会とも決勝で敗れたジョコビッチ全米オープン前のマスターズ2大会とも決勝で敗れたジョコビッチ しかし、この夏に限っていえば、そのジョコビッチの「独裁体制」に多少の揺らぎが見え始めている。ウインブルドン優勝後に休養とトレーニング期間を設け、満を持して出場した8月上旬のモントリオール・マスターズは、決勝でアンディ・マリー(イギリス)に約2年ぶりに敗れて準優勝。翌週のシンシナティ・マスターズでも、やはり決勝でロジャー・フェデラー(スイス)にストレートで敗れた。まだ獲得ポイントに大きな開きがあるため、世界1位の座は安泰だが、上位陣による「ジョコビッチ包囲網」は徐々に狭まりつつある。

「2年ぶりの勝利」を強調されると、マリーはいつもの抑揚のない声のトーンに、幾分情感を込めて言った。

「去年の僕はノバクだけでなく、ほとんどのトップ選手に勝てていない。それは、腰の手術から完全に復調するまで時間を必要としたからだ」

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