フロリダ在住、大坂なおみ。全米OP覇者を倒した17歳 (3ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 試合後の会見でアメリカの記者たちは、褐色の肌を持つ日本国籍の少女の生い立ちに多大な関心を抱いた。その中でも、プロフィールに書かれた出身地が『Osaka city』であることは好奇の対象となり、「これは単なる偶然?」との質問が飛んだ。

「違うわ。この街で生まれた人は全員、オオサカさんになるのよ」

 そう応じると、戸惑いの色を見せる大人たちに向けて茶目っけたっぷりに、「ジョークよ」と付け加えた。

 公式プロフィールが示す通り、大坂なおみが生まれたのは、『1997年10月16日(現17歳)・大阪府大阪市』。当時母親が勤務していたオフィスのすぐ近くには、関西テニスの中心地・靭(うつぼ)テニスセンターがあった。

 大坂が3歳の時に、一家はアメリカへと移住する。父の仕事や、子育ての環境を考慮した上での決断だった。最初に移り住んだ街は、ハイチ出身アメリカ人の父親が学生時代を過ごしたニューヨーク。全米オープンの会場でもあるナショナル・テニス・センターのコートで、2歳年長の姉、そして父親と一緒にテニスを始めた。

「最初のころ、テニスは楽しくなかった」

 そう、大坂は回想する。ともに競い合う姉には、どうしても勝てない。初めての練習では顔にボールが当たり、それがトラウマにもなった。練習場所は公営のテニスコートで、打ち合う相手は家族たち。代わり映えしない環境の中で、常に自分が一番下という状況は面白いはずもない。だが、それでもコートに向かってボールを打つことは、彼女の日常の一部となっていった。

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