南アフリカの壁は高かった。日本代表、トライまで残り50センチが遠い (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • 谷本結利●撮影 photo by Tanimoto Yuuri

 しかしながら、相手陣22メートルライン内に入っても、残り1メートル、50センチのところで止められ、なかなかトライに結びつけることができなかった。南アフリカ代表に一瞬でも隙を見せると、たちまちジャッカル(ラックボールを奪うプレー)を許してしまう。BK(バックス)がモールに参加しても、トライは取れなかった。ここが、世界との差か......。

 PR(プロップ)稲垣啓太は、その差をこう振り返る。

「勝敗を分けたのは、ディテール(細かい点)の差。ティア1(世界の強豪10チームは)のチームは、ひとつのミスをトライに持っていける力がある。相手の22メートルに入って、あと一歩、早めにボールが出れば......というところで、相手は確実に(ボールに)絡んできた」

 南アフリカ代表の戦術も長けていた。29度の暑さ・湿度のなかでボールを保持するのではなく、9番や10番からのキックを多用し、ラインアウトを増やして空中戦やディフェンスでプレッシャーをかけてきた。日本代表は自分たちからボールを持ったというより、持たされてしまった感が強い。

 また、その空中戦でも後手を踏んでしまった。攻めてもなかなかトライが奪えない状況のなか、前半22分にSO(スタンドオフ)田村優のハイパントキックを相手にキャッチされて簡単にトライを許したことは、チームの勢いを削がれる痛恨の一打となった。

 ジョセフHCは試合後、こう反省する。

「相手の空中戦が非常に強かった。キックも競り負けて失点した。日本代表のWTB(ウィング)は福岡(堅樹)も松島(幸太朗)も体格が大きくないので、そこで劣勢になってしまった。(ワールドカップで対戦する)スコットランドやアイルランドもそういう戦術を組み立ててくると思うので、そこを課題として取り組んでいきたい」

 最後の壮行試合で、新たな課題が見つかった。ただ、先日のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で出た課題は、きっちりと改善されていた。

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