対抗戦6連覇も「満足せず」。帝京大の進撃はどうにも止まらない (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  photo by Kyodo News


「一人ひとりの意識だと思います」

 それはそうだ。帝京大はふだんの練習から意識を高めている。実はセービングに関し、こんなエピソードがある。今年の夏合宿(長野・菅平高原)。早大との練習試合の後、岩出監督はインゴールで雑なプレーからトライを取られたことを叱ったそうだ。セービングをしなかったことを注意したそうで、岩出監督は「セービングは頭から行くんだ!」と言って、自ら数本、セービングのお手本を見せたのだ。58歳の名監督が、である。

 監督にとっては、10何年ぶりのセービングだった。岩出監督にその時のことを聞けば、「わざと熱くインプットしていくのも大事ですから」と照れた。

 松田もまた、夏合宿の監督の"魂のセービング"をよく覚えている。

「熱いものをすごく感じました。それだけ、セービングが大事だということがわかりました。いつも意識しています」

 この日、松田は6つのトライ後のゴールキックをすべて蹴り込んだ。難しいライン際からのキックがうち4本もあった。結局、42-15の快勝に貢献した。

 キックの成長は研究熱心さのたまものだろう。松田は2年生の頃から自身のラグビーノートにすべての試合のキックの成功率を記している。試合ごと、レビューする。ゴールキックを蹴る際の状況を松田が説明する。

「いつもいいリズムで蹴るように心掛けています。入るタイミングが大事です。自分のポイントを押さえて、入るイメージが頭にできたら、蹴るようにしています」

 松田はもちろんチーム同様、成長途上である。今年6月、日本代表入りし、スコットランド代表と戦った。代表メンバーでは唯一の大学生だった。ただ、慣れぬFBとあって、内容は反省の多いものだった。故意のノックオンで人生初のシンビン(10分間の一時的退場)までとられた。

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