【卓球】「31年ぶりの銀」は「リオ五輪の金」につながるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 そして4ゲームの平野が負けて2対2になったあと登場したのは石川。村上監督曰く「速いスピードに慣れるために男子と練習しているが、その練習は強い選手に対して(自信を持って)向かっていけるが、格下の選手相手でうまくいかない時はイライラする弊害もある」と言うように、世界ランキング100位のブリット・エーラントを相手に2セット先取しながらも、その後の2セットを取られると、ファイナルセットも1対4とリードされた。そのときの心境を石川は、「負けたと思った。でもみんながまわしてくれた5ゲーム目だから、絶対に諦めないと誓った。自分との戦いだった」と振り返り、涙を流した。

 そんな経験を経て臨んだ準決勝・香港戦。「石川が2勝をあげて、残りのふたりがどこかで1勝を奪うという作戦だった」という村上監督は、石垣を1番手、石川を2番手にし、平野を1ゲームだけの3番手にした。だが相手の1番手の李皓晴(リ・コウセイ)は世界ランキング14位で、2番手の姜華※(キョウ・カクン/※は王へん君)は17位。さらに3番手の呉穎嵐(ゴ・エイラン)は33位だが、平野は最近2連敗している相手。苦しい戦いが予想された。

 石川がフルセットで勝って1勝1敗にした後の第3ゲーム。平野は2セットを連取され、第3セットは4対9とリードされて絶体絶命の危機を迎えた。にも係わらず、「そんなに点差があったんですか。信じられない」と試合後に話した平野は、そこから粘りを見せた。

「6対9で相手がタイムアウトを取った時、平野が『このサーブで突いてみようと思う』と言ったんです。彼女は自分の戦い方を見つけるのに時間がかかるが、それを見つけたんです」

 村上監督が言うように、平野は呉のバックハンドからの攻撃的なレシーブであるチキータを封じるために、フォア側をより深く狙うサーブに変えた。それでセットポイントを先に取られながらも12対10でセットを取ると、次は11対2。そしてファイナルセットもジュースまでもつれながら、12対10で取って逆転勝利を収めたのだ。

 第4ゲームは石川がセット数1対2とリードされる場面もあった。そこで持ち直すきっかけとなったのが、「試合に勝ちたいという気持ちが出すぎるとミスをするというのを忘れていたが、それをコーチに指摘された」ことだったという。結果、ファイナルセットは主導権を先に握って11対7で勝利した。

「2ゲーム目の時は落ち着いていたが、4ゲーム目はずっと焦っていて苦しかった。でも平野さんがいい試合をしてくれたので絶対に勝ちたいと思って。昨日(オランダ戦)は負けたらベンチに戻れないと思っていたが、今日はみんなでつかんだ勝利だと思う」

 こう話す石川は前日の涙と違い、満面の笑みで勝利を喜んだ。

 そうして迎えた5日の決勝。中国はやはり強かった。

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