パリオリンピック男子バスケ 日本はフランスに惜敗もブラジル戦に大きな布石「武器はスピード」【原修太の視点】 (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【八村退場で発揮された河村のリーダーシップ】

ゲーム開始からNBA新人王ウェンバンヤマに1対1で勝った八村 photo by FIBAゲーム開始からNBA新人王ウェンバンヤマに1対1で勝った八村 photo by FIBAこの記事に関連する写真を見る 大会前の強化試合でフランスを見た時は、ゴベアからウェンバンヤマへのハイローの攻撃(フリースローライン近辺のハイポストからリング下近辺のローポストにパスを出す)が多かった印象ですが、このふたりが同時にコートに立つ時間は厳しい時間帯でも想像よりも少なかった。そのうえで日本はゴベアがハイポストに入った時は完全に後ろ(ゴール側)に引いて守り、少し外からのシュートなら打たせていいような布陣を引いていました。

 そのような流れのなか、ハーフタイムは44―49と5点ビハインド。得点はドイツ戦と同じで失点も3点少ないだけでしたが、印象は全く違い、前半終了間際には、これは勝てるのでは? と思わせてくれるような試合内容でした。

 日本は完全に主導権を握っていました。ただ、第4クォーター序盤、8点差をつけられたところで八村選手の連続3ポイントで勢いに乗ったところ、ふたつ目のアンスポーツマンライクファウル。残り8分31秒で、退場になった時は「このタイミングで」と感じましたが、その後、河村選手がチームを引っ張り、真のリーダーシップを見せてくれました(合計で29得点、7リバウンド、6アシスト)。

 大会前の強化試合で、河村選手が八村選手から「遠慮しないでもっと攻めていい」といった旨のアドバイスを受けたという報道を見ましたが、おそらくその時からずっと自分のなかで意識してプレーしてきたのでしょう。

 八村選手が退場したからではなく、ドイツ戦、この試合も試合開始からその心づもりでプレーしていた証拠で、それが危機的状況で顕著な形で発揮されたのだと思います。それは、河村選手以外のメンバーたちも同じで、もちろん八村選手が最後までプレーしてもらいたかったことが大前提ですが、八村選手がいなくても自分たちのバスケットボールを貫くという強い気持ちを持ってプレーしたと思います。

 あと、吉井選手と並んで、渡邊飛勇選手もこの大舞台でステップアップしました(18分36秒出場で、4得点、オフェンス3を含む6リバウンド、2ブロック)。これまでケガでなかなか潜在能力を発揮するパフォーマンスに結びつく機会がなかったですが、この試合、しかも要所ですばらしい働きを見せました。

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