パリオリンピック女子バスケ アメリカ戦を萩原美樹子が考察 次のドイツ戦のポイントは? (3ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【ドイツ戦勝利のためのふたつのカギ】

 さて、日本はアメリカに敗れたため、準々決勝進出のためには8月1日に行なわれるドイツ戦、8月4日のベルギー戦は落とせない戦いになります。ちなみにドイツ対ベルギーは、ドイツが勝っています。

 ドイツも大型チームで、シューティングガードのレオニー・フィービッチ(WNBA_ニューヨーク・リバティ)が192センチ、ベルギー戦では3ポイントシュートを4本打って3本成功、チーム全体でも50%の高確率をマークしました。

 また、187センチのフォワード、ニャラ・サバリー(リバティ)がインサイドでは"無双"状態だったのですが、顔のケガで第3クォーターで退場。日本戦で彼女がプレーできるかどうかは、まだ不明です。日本は、アメリカ戦で髙田以外の選手たちがインサイドのオフェンスで苦戦を強いられたこともあり、サバリーが出場するかどうかで、得点力に大きな影響がありそうです。

 では、勝つために必要なことを考えていくと、ふたつのことが思い浮かびます。

 まずは、ターンオーバーを減らすこと。

 初戦は、日本国内では通るパスが、腕の長いアメリカの選手には引っかかってしまい、ターンオーバーされるシーンが目立ちました。私がアンダーカテゴリーの日本代表のヘッドコーチを務めていた時も、世界大会が始まって最初の段階で頻発するシーンでした。日本国内の感覚が抜けきらないのが要因ですが、試合を重ねるにつれ、対処できるようになります。

 アメリカは最もリーチが長く、しかもスピードのあるチームですから、むしろ、最初にアメリカの腕の長さを経験したことがプラスに働くかもしれません。

 そしてもうひとつ、ドイツに勝つためには、アメリカ戦の前半戦で見せたような強度の高いディフェンスを40分間やり続けることが必要です。

 オフェンスとディフェンスは表裏一体。オフェンスがうまくいけば、気持ちも乗ってくるので、ディフェンスもよくなります。反対にシュートが落ちだすと、一瞬、気持ちが落ち込み、ディフェンスへの気持ちの切り替えが遅くなってしまいます。アメリカは後半、その隙を突いてきたので、ドイツ戦では、オフェンスでリズムに乗り、それをディフェンスへとつなぎたいところです。

 ここからが本当の戦いで、グループCを2位で通過できれば、決勝でもう一度アメリカと対戦できる可能性が高まります。3位通過だと、準々決勝での再戦もあり得ます。

 頂点を目指すためにもドイツ戦が重要で、選手、スタッフにはアメリカ戦がいいレッスンになった――という試合を期待したいと思います。

【Profile】萩原美樹子(はぎわら・みきこ)/1970年4月17日生まれ、福島県出身。福島女子高→共同石油・ジャパンエナジー(現・ENEOS)→WNBAサクラメント・モナークス→WNBAフェニックス・マーキュリー→ジャパンエナジー。現役時代は、アウトサイドのシュート力に定評のあるフォワードとして活躍。日本代表でも多くの国際大会に出場し、1996年アトランタ五輪では1試合平均17.8得点、3Pシュート成功率44.2%をマーク。準々決勝のアメリカ戦でも22得点をマークするなどその活躍が目に留まり、翌年、ドラフでWNBA入りし、2年間プレーした。現役引退後、早稲田大学を卒業。指導者として同大女子バスケボール部、2004年アテネ五輪女子代表のアシスタントコーチを務めるなど経験を積み、現在はWリーグ・東京羽田ヴィッキーズで指揮をとる。

プロフィール

  • 生島 淳

    生島 淳 (いくしま・じゅん)

    スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo

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