涙とともに成長した渡邊雄太。
W杯の教訓は「プレッシャーに勝つこと」
34点、9リバウンド。フリースローは12本をすべて決めるパーフェクト。日本が13年ぶりに出場したバスケットボールのワールドカップ(以下W杯)の順位決定戦、ラストゲームのモンテネグロ戦で渡邊雄太(SF/メンフィス・グリズリーズ)が発揮したパフォーマンスは、ひとりだけ次元が違った。
W杯最終戦で本来の力を発揮した渡邉雄太 この試合で叩き出した34得点は大会におけるゲームハイを樹立(他に3選手が同率1位)。W杯の5試合で渡邊が残した平均32分出場、15.6点のスタッツは、八村塁(SF/ワシントン・ウィザーズ)の平均24.3分出場、13.3点(3試合)のアベレージを上回り、チーム1位。渡邊の鬼気迫るプレーは、勝利につながらなかったとはいえ、誰もが日本代表に求めていた姿だった。
「ニュージーランド戦のように情けないプレーのまま終わりたくなかったし、最終戦で遅いかもしれないですが、自分の持っているものを100%出しきろうとした結果がスタッツにも残りました。チームを勝たせたかったという気持ちが強かったです」
34得点を叩き出した原動力となったのは、怒りと悔しさ。そして後悔したくないという思いからだった。順位決定戦の一発目のニュージーランド戦で81-111と大敗した大きな敗因はメンタルブレイク。
1次ラウンドが終了し、八村が膝の不調と疲労でチームを離脱し、キャプテンの篠山竜青(PG/川崎ブレイブサンダース)までも足の負傷で欠場を余儀なくされた状況で士気が下がってしまったことは、選手それぞれが反省点としてあげている。大敗した後に「戦う準備ができていた選手は誰もいない」と指摘した渡邊だが、それはチームメイトだけのことではなく、自分自身に向けた怒りの言葉でもあった。
渡邊は、昨年9月にW杯予選に初参戦したときから「僕と塁が来て負けるわけにはいかない」とプレッシャーを自分にかけて臨んでいた。自分たちが日常で戦っているステージは世界基準であることを自負しているからこその発言であり、それがカザフスタン戦での出足からのゴールアタックに現れ、イラン戦では持ち前のディフェンスで相手エースを後半封じることにつながった。
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